フレックスタイム制を導入する際に考慮したい矛盾点

本日は、フレックスタイム制を導入する際に考慮したい矛盾点についてお話しさせていただきます。

フレックスタイム制とは?

(1)フレックスタイム制とは、あらかじめ1か月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業・終業時刻を選択して働く制度のことを指します。

(2)他の変形労働時間制とは異なり、時間外労働の計算は、精算期間内における法定労働時間の総枠を超えているかどうかのみで判断します。

(3)フレックスタイム制を採用する場合、必ず、就業規則で始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めなければなりません。そのうえで労使協定を締結します(届出の義務なし)

フレックスタイム制の法定労働時間の総枠

精算期間(1日~末) 法定労働時間の総枠(1週の法定労働時間が40時間)
末日が31日の場合 177.1時間
末日が30日の場合 171.4時間
末日が29日の場合 165.7時間
末日が28日の場合 160.0時間

 

ここからは、上の表を見ながら、例を用いて説明していきたいと思います。

例えば、【1日8時間 1週間40時間の枠組み】で契約時間を決めていたとすると、末日が30日である6月の場合、次のような計算になります。

(1)法定労働時間の総枠は171.4時間である

(2)6月の労働日数は【30日-8日(休日)=22日】となる

(3)1カ月の労働時間は【22日×8時間=176時間】となる

もう、矛盾に気づかれましたよね? 

そうなんです、この場合、1日及び1週間の労働時間が法定絵労働時間内であるにも関わらず、フレックスタイム制の労働時間の管理上は契約時間そのものが【171.4時間】という法定労働時間の総枠を上回ってしまうのです。つまり、最初から割増賃金が発生しているということになります。

この点に関して、下記のような行政解釈がなされています。

都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長の基発  平成9年4月1日から

(法定労働時間の総枠の特例)

次の要件を満たす場合に特例を認めております。その場合、法定労働時間の総枠は最大184時間まで拡大されます。(具体的には5週平均で週40時間以内であればよいことになります。)

(1)精算期間を1か月とするフレックスタイム制の労使協定が締結されていること

(2)精算期間を通じて毎週必ず2日以上休日が付与されていること。

(3)当該精算期間の29日目を起算日とする1週間(特定期間)における当該者の実際の労働日ごとの労働時間の合計が40時間を超えるものでないこと。

(4)精算期間における労働日ごとの労働時間がおおむね一定であること。したがって、完全週休2日制を採用する事業場における精算期間中の労働日ごとの労働時間についてはおおむね8時間以下であること。

これで解決かと思いきや、実はこの特例の要件には落とし穴が存在します。(3)(4)は残業が多い場合は適用されないのです。

特例が適用されない場合、月によっては矛盾を抱えたままになってしまいます。

上の方で挙げた例の場合、1日8時間・週40時間(土・日が休日)で働いても、やはり最初から割増賃金が発生することになってしまうということです。

このように、フレックスタイム制にはいろいろとややこしい部分がございますので、導入をお考えの方は、ぜひ一度私にご相談下さい。