耳と舌で味わうコンサート ~18世紀貴族の晩餐会~

去年あたりから、日本テレマン協会が『18世紀貴族の晩餐会』というコンサート企画を始めました。

日本初の食事を楽しみながら鑑賞するコンサートです。

当時流行していたテレマン氏の『食卓の音楽』を生演奏で聴きながら、当時のディナーメニューを再現した料理を楽しめるという贅沢。

クラシック好きの私と妻(詳しくはありませんが)も、過去に無料招待を受けて以来、ちょこちょこ参加させていただいています。

 

実は、コロナの影響で長いあいだ休止していたのですが、先月やっと再開されたので、WEB関連の管理や投稿内容の編集をお願いしている娘夫婦も誘って一緒に行ってきました。

 

少し話がそれますが、今の事務所の開業当時、私は会社をすでに退職しており、収入ゼロの状態からのスタートでした。

貯金を切り崩しながらの生活だったので、WEB集客にかけられるお金も少なく、IT関係が得意な娘に泣きついたのでした。

 

娘は10代の頃から作家を志望しており、私が退職するのと同時期に娘も「仕事を辞めて小説を書くことに専念したい」と退職していました。

(妻も子どものころから作家になることを夢見ていたので、娘の行く末を心配しつつも止められなかったようです)

 

報酬は出世払いということで、ホームページの制作からCEO対策などをすべて娘が引き受けてくれました。

得意といっても、学校で少し習った程度で、あとは自分のホームページを作りながら自己流で身につけた知識でした。そのため、進めていくうちにわからないことがたくさん出てきて、場合によっては一から勉強したりと大変だったようです。

 

今回はその感謝の気持ちも込めて招待したのですが、このブログの執筆も手伝ってもらうことになるので、仕事も兼ねての同行といった感じでした。

日本テレマンの室内音楽の良さを伝えるには、やはり娘の表現力も借りねば……と思った次第です。

 

会場のニューオオサカホテル心斎橋「グロッタ」サロンdeメランテに着き、受付を済ませて待合用のカフェに入ると、すでに娘夫婦が席についていました。

 

よく顔を出してくれる息子と違って、娘はなかなか家に帰ってこないので会うのは何か月ぶりかです。ひとまず元気そうにしていて安心しました。

 

娘「彼が古着屋さんで気に入って買ったコートがたまたまカシミアやったらしい」

私「ほんまか。俺も今日着てるこの服カシヤマやねん」(知ってる人は知ってるブランド)

娘夫婦「!!!!!???」

 

私「今月、仕事が忙しすぎて経費を使う暇がないから税金が怖いねん」

娘「それは大変! 私の報酬もっと上げてくれてもいいで~」

 

などなど、相変わらずな会話をしているうちに、いよいよ会場に移動する時間になりました。

 

会場は、建物の外に出ある階段を下りていった先、地下にあります。

階段の壁も含めて空間全体が洞窟のような造りになっています。

ここをはじめて訪れる娘夫婦は、「すごい、洞窟みたい」とすでに興奮気味。

 

上着と荷物を預けて、白いクロスの敷かれた丸いテーブル席に腰掛けました。

ナプキンを膝にかけて、ドキドキしながら始まるのを待ちます。

ステージの、いつもはチェンバロが置かれている場所に真っピンクのピアノが設置されていたので、チェンバロ好きの私と妻、そして娘は『今日はチェンバロの演奏はないのかな?』とちょっとだけ残念に思いました。

 

指揮者の延原武春氏が前に出て開演の挨拶を始めると、あちこちで笑いが漏れて場の雰囲気が一気に和みました。

日本テレマン協会のコンサートは、延原氏の飾らない人柄のおかげで、変に緊張せず気軽にクラシックを楽しめるということも魅力のひとつです。

 

挨拶が終わると、ドリンクが用意され、バターナッツというカボチャを使ったスープが運ばれてきました。

食事に合わせてワインも用意されていたのですが、私は車の運転があるのでソフトドリンクで我慢しました。

 

演奏が始まると、会話の声が止んで、あたりは楽器の音色と食器同士がぶつかり合う微かな金属音だけに包まれました。

 

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(いいアングルからの写真が撮れなかったので、画像は公式のyoutube動画からお借りしました。動画自体のリンクはこの記事の下の方に貼ってあります)

 

バイオリンの伸びやかな表現、ヴィオラの力強くて柔らかな音色、チェロの幅の広い音域、コントラバスの奏でる深み……食事だけでなく音楽も贅沢三昧です。

 

あのピンクのピアノは新しいチェンバロだったらしく、複数の弦の音が重なり合うチェンバロの豊かな響きも存分に楽しむことができました。

 

料理も最高で、待ちに待った再開を祝しての大判振る舞いだったのでしょうか、メインは見たこともないくらい分厚いフォアグラとトリュフが乗ったこれまた分厚いレアステーキでした。

(当時の貴族はこんな贅沢をしていたのか、それとも今回は特別フルコースだったのか……)

 

聴覚はうつくしい音楽に、味覚はおいしい料理にそれぞれ満たされて、全身が喜びで満ち溢れていくようでした。

 

この日はなんと指揮者の延原武春氏も、途中、奏者として舞台に立っていました。

オーボエというクラリネットに似た楽器を吹いており、ソロでの演奏もありました。

 

恥ずかしながら、オーボエとう楽器をこの日はじめて知ったのですが、この音色には他の管楽器とはまた違った魅力を感じました。

日常生活に溶け込む飾らない音でありながら、聴く人の内側から沸き上がる熱い想いを誘い出すような魅力があるのです。

 

『弾いてみたい!』と、妻も私も思ったのですが、この楽器、かなり高価なものらしく、滅多なことでは手に入らなさそうです。

買ったところで延原氏と同じ音を出せるとも思えないし……と、自分に言い聞かせつつ、機会があったら一度は吹いてみたいという気持ちは、先々の夢として心の片隅に留めておこうと思います。

 

オーボエとアベマリアの楽曲との調和が素晴らしかったので、帰り際にCDも買って帰りました。残り一枚だったこともあって即決でした。
珍しく、私も妻に負けないくらいハイテンションになって帰路につきました。

 

娘夫婦も良い体験だったらしく、「明日からはクラシックを流しながらご飯を食べる」と嬉しそうに話していました。

 

コロナが流行りはじめる前は、同じく日本テレマン協会の定期演奏会にも時折出かけておりました。

大阪倶楽部というレトロな建物の室内演奏で、こちらは食事なしですが、リラックスし
ながら楽しめるのは同じです。

音楽は本来、こういう気の張らないものがいいなと、個人的には思っています。

日本テレマンと出会って、クラシック音楽の門戸を開いていただいたような気持ちで
いっぱいです。

 

↓過去の演奏会の様子はこちら

www.youtube.com

 

 

最後に家の近所にある神剣神社の秋をちょこっとだけお届けして終わろうと思います。

 

 

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京都や奈良の華やか紅葉も素敵ですが、こういう身近に感じる秋もいいものですね。

 

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見慣れた境内も、カメラを向ける角度によって、ぜんぜん違った場所に感じられます。

 

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それでは、また。

最後までお読みいただいてありがとうございました。